サン・ポール・ド・ヴァンス
ニースから車で約20分ほど走ったところに、サン ポールという古い小さな村があlります。最近は観光客がたくさん訪れるようななってしまいましたが、南フランスの町や村の中でももっとも好きな村のひとつです。
南フランスを訪れたときは少なくともこの村に数日は滞在することにしています。
サン・ポール

小さな村で、ゆっくり歩いても10分もあれば村の入り口から端までついてしまいます。
普通の観光であれば隅から隅まで見学するとしても半日もあれば充分でしょう。しかし、南フランスの村の素晴らしさは、そこに滞在してみてだんだん分かってくるものです。私の場合1回の旅行で何週間も滞在することはできませんが、気に入った場所には数日滞在することにしています。

2004
年現在でこの村を24回訪れました。ひょっとしたら日本人の訪問者ではトップかも知れません。
この村を最初に訪れた時の印象を未だに覚えています。
30余年前、とりあえずフランスへ絵を描きに行こうと思い、エールフランスに乗り込んだのですが・・・。
その時、機内の雑誌にこの村が掲載されており、それではこの村に行ってみようと、パリですぐにニース行きに乗り継議ました。
ニース空港からタクシーでこの村に着いた時はすっかり暗くなってしまっていたので、村の入り口にあるホテルにとりあえず部屋を確保しました。
あとで分かったことですが、この村にはいくつかのホテルがあります。その時滞在したのがラ・コロンブ・ドールというホテルでした。(後に分かったのだが大変由緒ある有名なホテルでした) すべてがアンチークで、この後何度も滞在しました。
コロンブドール 部屋
              ラ・コロンブドール

他にも、村の中には雰囲気のよいル・サンポールとか、庶民的なロンパール(現在はありません)といったホテルがあります。また、村の少々手前にはご夫婦で経営しているル・アモーというホテルがあり、それぞれ違った味を持つ良いホテルです。
コロンブ ドールの前にカフェ・ドゥ・ラ・プラースというカフェがあり、朝起きると必ずこのカフェで夜明けのコーヒーを飲みにいきます。・・・とはいっても8時頃。
私が訪れるのは常に冬の季節で、朝8時ではまだ薄暗い。フランスのどこにでもあるようなカフェですが、なぜかここが気に入っています。
ペタンク
                     カフェ前でペタンク

村の人達がよく訪れ、カフェの主人やらギャルソンとしばらく世間話に花を咲かせています。
そうした話しを聞きながら、あるいはすぐ前の広場ではじまるペタンクに興じている旦那衆を眺めながらコーヒーやパスティスを飲むのが何とも言えません。

地中海沿岸独特の温暖な気候のためか、あまり寒いと感じたことはありません。このカフェの左壁面に雪のサン ポールを写した写真が飾ってあるので、ギャルソンに「ここでも雪が降るのか」と聞いたところ、「霜が降りることもめったにないが、年によってはごくまれに雪が降る。」とのこと。確かにここから数キロ北へ行った山は雪を頂いています。

昔、この村にはタクシーが2台しかありませんでした。
1台はムッシュー ピポ、もう1台はムッシュー ジベールだ。
ピポとは最初にこの村を訪れて以来だいぶお世話になりました。(今では手前の町コールでイタリアレストランを経営しています。)
最初の時、彼のタクシーで近くの村々を回りましたが、その頃、私はフランス語がよく分からなかったにもかかわらず、熱心に案内してくれました。以来ピポ、ジベールをはじめ、その後を引き継いだエリック、ジャン・ジャック等、私が訪れるたびにお世話になっています。
何度か訪れ、いろいろな人達と話しをしていると、この村の本当の良さが分かってきます。

巨匠マルク・シャガールは晩年、ヴァンスからこのサンポールに移り住み、この地でなくなりました。この地を何度目かに訪れ、日本に帰ってきて1週間ほどたった頃、サン・ポール・ド・ヴァンス発の外電でシャガールの死がラジオで報じられたのを覚えています。

シャンソン歌手として有名なイヴ・モンタンもこの村を愛し、冬になるとこの地で過ごしていたようです。
コロンブドールの入り口にはピカソが滞在したときの写真がさりげなく掛かっている。

村の中心に教会があり、そのとなりにサンポール歴史博物館があります。
その出口にはかつてこの地を訪れた世界中の芸術家、映画スター、文化人等の写真が掲示されている。ここにその名を紹介するより、実際にご覧になることをお勧めします。

私がこの村を訪れる最大の目的は、絵を描くことであり、実際今までにこの村の絵はずいぶん描いてきました。
ここで描いているととても気持ちがいいのです。
一番好きなアングルは、村から西に少々離れたところに小学校があり、そこから国道へ上がる土手の辺りから村を振り返って描くのが一番気に入っています。

サン・ポール村
                   描いた絵と
若いころ 若いころ
            若い頃 サン・ポールで
また、村の中に入って、小径を小品で描くのもおもしろいと思います。
ただし、最近はどこで描いていてもギャラリーが寄ってくるのを覚悟する必要があります。
著書「南フランスに魅せられて」(近代文芸社)より抜粋


 20039月には、ラ・コロンブ・ドールでなく、村の中にあるル・サンポールに泊まってみました。
このホテルも約10年前に家族と来たときに泊まったことがあるのですが・・・。
部屋はこじんまりしていますが、食事はとてもすばらしい内容でした。
テラスでの夕食の雰囲気は格別です。

2004年にこの村を訪れた時、村の一番奥にあるお土産屋の前で絵を描いていました。
そのお土産屋のマダムが時々私の脇に来て、私の描いている絵を見ながら、私に笑みを浮かべていました。
会話はできないと思っていたようです。
その後、キッカケは忘れたが、私がフランス語が理解できると知るといろいろと話してきました。
サン・ポールには今や多くの日本人が訪れるようになりましたが、フランス語をしゃべれるのは私が初めてだそうです。それを聞いて嬉しいやら悲しいやら・・・。
]村の通り 村の手前から
     ル・サン・ポール前               村の手前から(これも若いころ)

私は何所に行くにも最低の挨拶だけは現地語で出来るように心がけています。
フランス語・ドイツ語についてはかなり自信もあるのですが、英語は最低のことは表現できません。
イタリアに行くとはイタリア語で、スペインに行くときはスペイン語を・・・。

それが旅行者のマナーだと思っています。(難しいけど・・・)

サン・ポール
   これは六十代か?

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