カルヴィ 〈コルシカ島〉
ニースの旧港に行くと、よくコルシカ行きのフェリーが停泊しているのを眺めながら、いつか行ってみようと思っていました。1996年、やっと機会を得て、絵の仲間と一緒に地中海に浮かぶ島「コルシカ島」に渡ってみました。本当はフェリーでゆっくり旅をしてみたかったのですが、時間がないので残念ながら飛行機を利用しました。

ニース空港からアジャクシオ空港まで、4発エンジンのプロペラ機で地中海を飛んで約40分・・・。
アジャクシオ空港に着くと暗くなってしまっていました。


カルヴィ
                           カルヴィ
コルシカは交通機関があまりないので出発前にレンタカーを2台予約しておきました。 
2台ともルノーの高級車でしたが、日頃は日本の名車(カローラ)を運転している私にとっては、メカニックが多少異なるので、慣れるのに一苦労・・・。
レンタカー屋のお嬢さんにホテルの場所を聞いてから、市内に向かったのですが・・・、教えてもらったホテルはあいにくと満室・・・。 仕方なく市内をホテルを探してさまよう事になってしまいました。

知らない土地での2台の車は大変厄介です。
しかも夜なので、信号待ちなどで1台を見失うとどうにもならなくなってしまいます。携帯電話などまだ無い時代なので・・・。
路地を曲がりながらゆっくり走っていたのだが、案の定、後ろの車がいつの間にか着いて来ないのに気が付きました。車を止めてしばらく待っていたのですが、来る気配がありません。
同乗の仲間と相談し、とりあえず来た道を戻ってみることにしました。
しばらく走ると、「いたいた・・・!」。私がも戻ってくるのを待っていてくれました。やれやれ一安心だがホテルを探さなくては・・・。

我々が車を止めていたすぐ前に1軒のパン屋がありました。後車の仲間に聞くと、私が戻ってくる間にパン屋の旦那が心配そうに車の脇に来て何か言っていたといいます。
しかし私の仲間はフランス語が解らないため、会話にはならず、店の中へ戻っていったようです。
ちょうどお腹もすいてきたので、このパン屋でパンを買って腹ごしらえをしようということになりました。
ついでにもしどこかホテルを知っていたら教えてもらおうと思って店に入りました。

訳けを話すと、このパン屋の旦那は電話帳を見ながら、めぼしいホテルに片っ端から電話を掛けてくれ、やっと「ホテルナポレオン」に空室が見つかりました。なんと親切な人なのか!
しかし、そのホテルまでどう行ったら良いのかよく解りません。町の地図を出して説明してくれたのですが、なれない町なので何としてもよく解りません。
すると、たまたまその店にパンを買いに来ていた若い夫婦が車で先導してくれると言います。
困ったときには神様が救ってくれるというのはこの様な時だと思いました。

この夫婦の先導で、町の路地を進み、「ホテルナポレオン」に無事に着きました。
受付でこの若夫婦が親しそうに話しをしていたので、このホテルの従業員とは顔なじみのようでした。
一同、この2人に丁重にお礼を言って分かれました。
その後、ホテルの受付紳士にそのご夫婦の名前と住所、また電話帳でパン屋の名前と住所を調べてもらい、帰国後、礼状を感謝の品を添えて送りました。 その後、双方から恐縮したような内容のお手紙とコルシカ独特の置き時計を送っていただきました。
その時計は、我が家の玄関でまだ健在に時を刻んでいたのですが、数年前に動かなくなってしまいました。

翌日、アジャクシオからバラーニャ地方のカルヴィまで海岸線沿いに走って約4時間、途中では、野豚や野生の羊の群などに行く手を阻まれながらも、何とか到着しました。

カルヴィの港
冬のせいか観光客などひとりもいませんが、しかし、観光案内所にはなぜか係りの女性がいました。 
早速ホテルを紹介してもらいました。 とはいっいても、営業していたホテルは一軒しかありませんでした。
このホテルをベースに、モンテ・マジォール、サン・アントニーノなどの村を訪れ、思う存分絵を描くことができました。

サンアントニーノ
                     サン・アントニーノ

モンテマジョール
                     モンテ・マジォール
営業しているレストランも少なかったため、昼食と夕食はいつも同じレストランでとることになりました。
フランスの片田舎では、同じ店に2回目に行くと従業員とも親しくなってしまいます。そこが町や村のたまり場であれば、お客さんとも親しくなります。
そんなわけで、3日目には、このレストラの常連とおぼしき連中と、意気投合し、カラオケバーに連れていってもらいました。
日本発祥のカラオケが、こんなフランスの片田舎で・・・とも思いましが、その時は大変気持ち良くなってしまい、恥ずかしながらシャンソンの「ミラポー橋」を歌わせてもらいました。
我々とよく似た酔っぱらいでしたが、良く気が合う連中でした。


バーで
                      カルヴィのバーで

コルシカに別れを告げる時となりまし。
数々の思いでを胸に抱きながら空港へと向かいました。
空港のお土産屋のおばさんまでが別れを惜しんでくれました。
搭乗時間までにはまだ多少の時間があります。すると搭乗手続きをする係官殿が我々を手招きで呼んでいます。
なぜ呼ばれたのかよく理解できませんでした。 何も悪いことはしていないし...

係官殿が言いました。
「あなた達は、はるばる日本から来たのだから、私たちの自慢するコルシカの風景を良く見ていって下さい。あなたたちを今から滑走路に向かうのを許可しますから・・・。
10分後には一般のお客を誘導しますので、10分間はこのコルシカ空港からの風景は貴方たちのものです。」(アジャクシオ空港では、搭乗手続きを終わると建物から出て滑走路を歩いて飛行機まで行きます。)

360度見晴らしのきく滑走路をゆっくり歩き、その風景を瞼に焼き付けて飛行機に向かいました。
何と親切な係官殿なのか!
一同、飛行機に乗り込む時に振り返り、係官殿に手を振りました。蔓延の笑みを浮かべて我々に手を振ってくれた係官殿に敬礼!